후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 167,285자 · 330화면
甲斐は袴の前を叩きながら、それは気の毒なことをした、と云った。七十郎は甲斐をにらみ、低い声に力をこめて、断わっておきますがね、と云った。
「断わっておきますが、義兄は自分が危篤だということを知っています、原田さんに云うことは、死ぬ人間の最後の言葉です、わかりますか」
甲斐は黙って、舎人のさしだす扇子を取った。七十郎は云った。
「死に臨んだ人間の言葉だということを忘れないで下さい」
甲斐は七十郎を見た。初めて、静かに七十郎を見、そして、七十郎にも似あわない、と微笑した。すると頬に深く皺がより、唇のあいだから、白いきれいな歯が見えた。
「七十郎にも似あわない、なにをそんなにいきごむんだ」と甲斐が云った、「小野は危篤かもしれないが、まだ死んだわけではないだろう」
「私がいきごんでいますか」
「小野は病状が危篤だというだけで、まだ死んではいないし、ことによるともち直して恢復するかもしれない、これは小野に限ったことではなく、人間はみな同じような状態にいるんだ、まぬがれることのできない、生と死のあいだで、そのぎりぎりのところで生きているんだ」
「貴方もですか」と七十郎が訊き返した、「貴方もそのぎりぎりのところで生きているというんですか、そうですか、原田さん」