후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 167,285자 · 330화면
甲斐もいちじくを一つ喰べた。かよは喰べるあいだもお饒舌りをやめず、一つ喰べ終ると、すぐに次のに手を出したが、おくみは、いけません、とやさしく睨んだ。またおなかが痛くなるからいけない、一つだけでおやめなさいね、と云い、かよはべそをかいて父親を見た。
「そう、おなかが痛くなるね」と甲斐が云った、「あとで煮てもらってお喰べ、煮て喰べれば大丈夫だよ」
「にいにで喰べる」とかよが母親に云った、「にいにでよ、かあかん」
「ええにいにしてあげましょうね、ばあやに煮てもらって喰べましょ、ばあや」
おくみが呼び、乳母がはいって来ると、かよは父親にしがみついて、ここにいるとかぶりを振った。ばあやが煮て来ればいい、かよは父さまに抱かっているのだ、と強い口ぶりで云い張った。久しぶりに抱かれるので、よほど側をはなれたくないらしい。おちょぼ口を屹とひき緊め、力んだ顔つきで、かよたんは抱っこでいるのよ、と繰り返した。
甲斐の額に皺がよった。可哀そうに、と甲斐は思った。こんな父を持って、年に幾たびと数えるほどしか会えないし、ゆくさきの幸不幸もわからない。母親には兄があるから、生活に困るようなことはないだろうが、父母といっしょに、安穏な暮しができるという望みはない。