후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 167,285자 · 330화면
枕許に少しはなして、経机を据え、湯呑に樒の葉が一枚入っていた。それだけで、香も、燈明もあげてはなかった。甲斐は夜具のそば近く坐って、じっと死顔を見まもった。
「臨終にこう申しました」とたつ女が脇から云った、「死んでも、香や燈明をあげてはいけない、僧も呼ぶな、読経も供養も無用、自分は成仏するつもりはない」
そこまで云うと、たつ女の喉へ嗚咽がこみあげて来、彼女は両手で口を押えたまま、やや暫く黙っていた。そして、嗚咽がしずまると、用心ぶかく声をととのえながら、やがてお家が安泰となるときが来よう、と丹三郎の遺言を続けた。
「そのときこそ、供養もしてもらい、成仏もしよう、それまでは魂となってとどまり、お館さまやお家を護り続ける覚悟である、と申しておりました」
甲斐は丹三郎の顔をみつめたまま、たつ女の言葉に頷いた。そのとき、菱本市之丞が、いちじくを盛った盆を持ってはいって来、ただいまお屋敷からこれを、と云って、そこへ差出した。甲斐は盆をひき寄せて、丹三郎の枕許へすすめた。
――主家が安泰となるまでは成仏しない、魂となってふみとどまり、甲斐や主家を護り続けるつもりだ。