일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 167,285자 · 330화면

아오조라 문고

と心の中で頷いた。

――自分はいつも、誰かに、どこかから見つめられていた。

幼ないときからそうであった。彼は五歳で父に死なれてから、船岡四千余石の館主として、周囲から見まもられて来た。寝ても起きても、いつも誰かに見まもられ、誰かに、うるさく世話をやかれたり、忠告され、意見されて来た。自由だったのは、山ごもりをしているときだけであった。そうだ、山にこもって、与五兵衛といっしょに狩をしたり、木を伐ったりするときだけ、そのときだけ自分は自由な、人間らしい気持になることができた。

――いまはさらに悪い。

いまの彼は、昔とはまるで違った眼と耳で、監視されている。その眼は、いま彼がこうして寝ているときにも、ひそかに彼をうかがい、その耳は彼の動静を聞きすましているのである。自分は誰にも、心をゆるせない。どんなばあいにも、こうして寝ていてさえも、心をゆるめるわけにはいかない。

「そうだ」と甲斐は呟いた、「これでは女に情をうつすことなどはできない、とうていできないことだ」

可哀そうに、と甲斐はおくみの顔を眺めながら、呟いた。するとおくみが眼をあいた。それまで眠っていなかったかのように、眼をあいて、静かに、こちらへ振向き、にっと、甲斐に頬笑みかけた。