후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 167,285자 · 330화면
「眼の迷いだ」と甲斐は云った。それは自分の聞いたのが幻聴にすぎなかった、ということを、自分に慥かめるような調子であった。
「そしてまた今夜も」とおくみは続けた、「夢のなかへきれいな女が出てきて、邪魔をするようなことを云うなんて、同じようなことが二度もあるなんてへんだわ」
「少しはなれないか」
「きっと誰か嫉んでいるのよ」
「暑い、少しはなれてくれ」
「誰かいるのね、そうでしょ」
おくみは甲斐の躯へ手をまわした。片手で甲斐の持っている団扇を取って投げ、きっと誰かいるのよ、と云いながらのしかかろうとした。甲斐は顔を急にそむけながら、はっきりした声で「起きているぞ」と云った。
おくみはとびのいた。すると襖の向うで村山喜兵衛の声が聞えた。
「松山さまがみえました」
「――松山だと」
甲斐はいぶかしそうに聞き返し、そして、すぐにゆくからいつもの座敷へとおすようにと云って、「いまなん刻であるか」と訊いた。喜兵衛は襖の向うから、やがて七つ(午前四時)になろう、と答えて去った。
「つまらない」とおくみは云った、「十一年めでようやくおもいがかなったのに、ゆっくりお話しをすることもできないんですもの、つまらないわ」