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あすなろう

あすなろう

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1960(昭和33)年8月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,925 字 · 41 页

青空文庫

ときがあるよ」

「今夜また一人やるとか云ってたが、そういう口でうまく騙したんだな」

「本当になさけなくなることがあるんだ、あにいにゃあそんなこたあねえか」

「今夜はなさけなかあねえんだな」

「業ってもんかもしれねえ」

「あまえたことを」と文次が云った。

「暫く土地を売って、息抜きがしてえんだ」と政は遠くを見るような眼つきで続けた、「その娘は二十六になる、下に妹が二人あって、その二人は嫁にいっちまった、姉のそのおむらというのはいちばん縹緻よしなんだが、縁不縁というやつか、今日まで売れ残っていたんだ」

「ひっかけるにゃあもってこいか」

「息抜きがしてえって云ったろう、その娘は百両持って来る筈だ」と政は続けた、「うちは大店だし、二十六にもなる娘を嫁にやるとなれば、軽くやっても二百両や三百両はかかるだろう、それを百両で片がつくんだし、娘は初めて男の味を知るわけだ」

「礼でも云ってもらいてえか」

「木更津に遠い親類がいるんだよ」政は徳利を振ってみて、残り少ないのを盃に注ぎながら云った、「そこへいって半年か一年、暢びりくらして来てえと思うんだ」

「ひとくちに百両って云うが、いくら大店だって百両は大金だ、娘なんぞに持ち出せる