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おせいとうじょう

お勢登場

江戸川 乱歩

「大衆文藝」1926(大正15)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,784 字 · 24 页

青空文庫

二

「アア、呼んで来てもいいがね。おとなしく遊ぶんだよ」

父親の許しを受けると、これも又子供の虚勢かも知れないのだが、正一は「嬉しい嬉しい」と叫びながら、さも快活に表の方へ飛び出して行って、間もなく三四人の遊び仲間を引っぱって来た。そして、格太郎がお膳の前で楊枝を使っている処へ、子供部屋の方から、もうドタンバタンという物音が聞え始めた。

二

子供達は、いつまでも子供部屋の中にじっとしていなかった。鬼ごっこか何かを始めたと見えて部屋から部屋へ走り廻る物音や、女中がそれを制する声などが、格太郎の部屋まで聞えて来た。中には戸惑いをして、彼のうしろの襖を開ける子供さえあった。

「アッ、おじさんがいらあ」

彼等は格太郎の顔を見ると、きまり悪相にそんなことを叫んで、向うへ逃げて行った。しまいには正一までが彼の部屋へ闖入した。そして、「ここへ隠れるんだ」などと云いながら、父親の机の下へ身をひそめたりした。

それらの光景を見ていると、格太郎はたのもしい感じで、心が一杯になった。そして、ふと、今日は植木いじりをよして、子供らの仲間入りをして遊んで見ようかという気になった。