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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「それは/\、しかし小川君が早まって改悛したのは案外の副産物でしたね」

「過ちの功名でございますわね。しかし随分危険な病気ですから、それぐらいのことでもなければ埋め合せがつきませんわ。尤も小川はそれが口惜しいと見えて、この頃では何かと申すと謹直を恩に着せますよ」

「兎に角早くお宜しくて結構でした」

「それでも根治は矢張り困難と見えまして、少し何か心配事がありますと、覿面に相好が変って、自分ながら恐ろしいような顔になるのでございますよ。斯ういう確かな晴雨計が出来ますと、小川も然う/\私に苦労ばかり掛けられませんわね」

と言って奥さんは笑った。貞女は良人の素行さえ修まれば少々の病気ぐらいは苦にならないらしい。

「天王寺は此処から直ぐのようでしたね?」

と少時してからお父さんが訊いた。

「直ぐでございます。彼処の公園と新世界それにお城と千日前が坊ちゃんを連れてお出になるのには一番よろしゅうございましょうよ」

と奥さんは逆さ竹だの飛ばない雀だのという天王寺の七不思議からお城の濠の底にある丸石のことを話し始めた。

「……その大きな丸い石に淀君の亡霊が籠っていて今でも時々人を引き込むのでございます。