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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
それから、がんもどきのおでんを一皿食べたところで、これも大なる負担ではあるまい。もう一杯、もう一杯。
ぶるぶると、寒さに眼がさめてあたりを顧みると、私は家へ帰る途中の田圃の麦の畦の間に寝ていたのである。早暁である。東の空に、淡紅の雲が棚引いている。
――しまった――
しかし、もう遅い。
蟇口のなかの金は、悉く呑み尽くしてあった。昨日の朝、家を出るときに米櫃が空であるのは知っていた。だが、それをいま想いだして、なにの役に立つのであろう。
私は、自分の腑甲斐なさに、意志の力の絶無なのに、長い吐息をして歎いた。掌が畦の土を固く掴んでいた。家へ帰るのをやめた。そこから、親爺のところへ行った。聞いてみると、あの二人はまだ戻らないというのである。私は、煙突掃除の刷毛と箒と塵取りと煤袋と溝掃除の鍬と鶴嘴と割り竹を、リヤカーに積んで、市中へさまよい出た。
ひる過ぎまで、あっちこっちと歩いたが、昨夜の泡盛の呑み過ぎで、からだの節々が痛む。頭痛が激しい。それに、昨夜の夕めしも、朝もひるも一粒の米も食っていないのであるから、眼が眩んで全く仕事にならなかった。その日は、まるで無収入に近かったのである。