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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
しゃもじ(杓子)
二、三日前、隣村の老友が私の病床を訪れて、例の「しゃもじ」がまた出たという。
貴公が、出あったのか。
いや、僕ではない、近所の青年が度胆を抜かれよった。
さては、彼の狸め、今もって頑健であるとみえるな。
怪物「しゃもじ」のことについては拙著「狐火記」のうちに書いておいたが、しかしこのような剽軽な変化は、二度と再び出るものではあるまいと当時考えていたから、このたび再び出現したというのをきいては、まことに今昔の感に堪えない。
今から、四十二、三年も昔のことであるから、私の青年時代である。隣村の東箱田にある村役場へ用事があって、ある日の午後から出かけていくと、折りよくこの老友も役場で雑談に耽っていた。
今は既に老友となったけれど、この老友も私と同じに歳は若く、気は盛んであった。久し振りの機会であったので、役場の小使に頼んで、濁酒一升を取り寄せた。われら二人は、豪酒であったから、僅かに一升を酌みあったのでは、腹の虫の機嫌に触れぬ。
とはいえ、季節は折柄養蚕上簇に際し、百姓は働けども働けども忙しい。しかも、働き盛りの青年が、酒をあおって節季を等閑視したとあっては、荒神さまに申しわけがたたぬであろう。