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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
純情狸
私に董仲舒ほどの学があれば、名偈の一句でも吐いて、しゃもじ奴に挑戦してみるのであったが、凡庸の悲しさ、ただ自失して遁走するの芸当しか知らなかったのは、返す返すも残念である。
さて、昔の若き友人は老友となって、私の病床を慰めながら語るに、僕の村の一青年が、数日前の夜、この村に用事があって夜半まで話し込み、星明かりをたよりに、野路を東箱田の方へ帰ってきた。
折柄、浅間颪が寒く刈田の面に吹き荒んで、畑では桑の枯枝が、もがり笛のように叫び鳴く。青年は袷の襟を押さえながら急ぎ足でやってくると、殿田用水の橋の真ん中に、大しゃもじが路を塞いで立っているではないか、あっとのめって、そのまま気絶した。
明け方眼ざめて村へ帰り、斯く斯くと語ったのであるが、貴公が四十数年前、桑畑の間で胆を潰したあのしゃもじの古狸めか、それとも子狸が親から相伝した変化術か。
はからずも老友と回顧談に耽り、おかげで私の病気も俄に快方に向かった次第である。想えば私の生涯も、永い年月であったわい。
上州は、古くより狸の産地としては、日本随一である。分福茶釜の茂林寺のことは作り話であろうけれど、茂林寺の近所の邑楽郡地方には、今でも盛んに出没している。