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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
学友いずれも耳を傾けたのである。すると一人が、
なまめかしいが、下品でないな。
そうだ。だが、音はすれども姿は見えぬというようだな。と、一人が答えた。
年の頃は十七、八歳というところかね。ところで、声のみきいて姿に接せず、というのが、なにか詩になりそうだね。
なりそうだ。
学友一同は、いずれも心にそう思った。誰もが盃を措いて紙と筆を採り、白い紙の面をにらみ込んだ。酒宴が脱線して、運座となったのである。
仙公狸が、一番早く詩を作った。仙公が、己の賦詩を朗読すると、名作であると賞詞を揃えて、一同は拍手したのである。もとより狸に詩を賦すことなどできるわけのものではないのであるけれど、神通力を持つ仙公だ。なにか、口の中でぶつぶつというと、それが学友達に聞こえたのかもしれない。
夢中になって歓語を交換していると、下のおかみさんが、襖の外から、先生がお見えになりましたから、ご案内しますと告げた。
連中は狼狽した。酒をのみながら芸妓を題にとって詩を作っているなどとは、学生の分際として穏やかでない。佐々木彦三郎はすぐ詩を書いた紙を丸めて、懐中へねじ込んだのである。