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あわもりものがたり

『たぬき汁』以後

佐藤 垢石

佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页

青空文庫

すべて畳を敷き詰めれば二百畳に余ろう。であるのに、この石坂家は数代前から、家族四人以上に増加したことがない。大伽籃のような邸に、もう百年近くも常に三、四人の家族が、まことに寂しく暮らしているのである。試みに、石坂家の戸籍を調べてみようか。

失踪 石坂儀右衛門(文政十二年生)

死亡 妻   たみ(天保四年生)

失踪 同  裕八郎(儀右衛門長男安政五年生)

死亡 妻   ふゆ(萬延元年生)

失踪 同   雅衛(裕八郎長男明治十四年生)

現存 妻   みよ(明治十六年生)

失踪 同   清一(雅衛長男明治三十七年生)

現存 妻   きみ(明治三十八年生)

当主 同   賢彌(昭和三年生)

以上を読むと現在この家に住んでいるのは当主の賢彌十九歳と、その母きみ四十一歳、祖母みよ六十四歳の三人だけである。これだけの説明ではまことに平凡であるけれど、賢彌の父清一、祖父雅衛、曾祖父裕八郎、玄祖父儀右衛門の四人が、いずれも揃って失踪していて、今もって的確に何故の失踪か、死場所はどこか、死因はなにか。一つとして分かっていないことが、長い間の不思議な謎とされているのである。