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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
いつもあまり、新しくない紺絣の着物を着ていたと記憶する。
私が入社した五、六年は、まだ大隈伯が頗る元気で、毎年暮れになると社の会議室へ姿を現わし、社員を集めて一場の訓話を施す例になっていたが、大隈さんが来社するほんとうの用向きは、報知新聞から毎年定まって贈るところの金十万円のお歳暮を取りにくるのであるという話であった。
中堅記者は、誰も彼もが飲む、買う、喧嘩の猛者であった。私は、入社前までは虫も殺さぬ順良な青年であったのであるけれど、純美な花蓮(?)もとうとう、見よう見まねで泥水に染まってしまった。
とうとう身を持ち崩した果てに、社を無断でずらかってしまったことがある。
故郷に帰って一年半ばかり暮らした。しかし、いまさら百姓になったところで、うまく米を作れるわけではなし、村役場の書記で一生通したのでは、まことに心細い。
そこで私は再び上京し、報知新聞社へ勤める決心をした。
三
編集局へ入って行ったところ、誰も私に言葉をかけてくれる者がいない。しかし、私はそんなことには平気である。
見ると、もと私の机であったところに知らぬ若い記者が座っている。
「君、ここは僕の机だよ、どいてくれ給え」