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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
私は、家族に飢えが迫るのを恐れて、呼吸がつまるほどのやるせなさを催すのである。私が寒い街の路傍を歩く姿は、喪家の犬のようであったかも知れない。
ところが、ある日相変わらず職を求めて歩きまわっていると、場末裏長屋の戸袋に『清掃人夫を求む』と書いた紙が貼ってあるのを発見した。私は、胸をとどろかしてその長屋の土間を訪れた。
土間に、顔も鼻の穴も手も真っ黒によごれた仕切り絆纏の五十格好の親爺が立っていた。私が入って行くと、その親爺は黒い顔から茶色の眼を光らせて、無言で私を睨めた。
「清掃人夫を求めているのは、こちらでしょうか」
と、問うた。
「ああ、そうだよ」
無愛想な親爺の返答である。
「清掃人夫というのは、どんな仕事をするのです」
「煙突掃除に、溝掃除だよ――ところで、清掃人夫をやりたいというのは誰だい」
親爺はこういってから、私の姿を頭から足の先まで茶色の瞳でながめおろした。
「私です」
「なんだお前か、お前みたいな生白いのには仕事が向かねえ。もっと頑丈な、節くれ立った人間でなけりゃ駄目だ」
私は、そのとき最後に取って置きの銘仙の絣を着、駒下駄をはいていたのである。