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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
五
守鶴が、尽きぬ湯を汲み出した茶釜が、現在の茂林寺の分福茶釜であるという。
狸となって守鶴が茂林寺を立ち退いた後も、正通和尚は守鶴少年の遺品として愛していた。庫裏の大火鉢にかけて、毎朝毎夕そこから湯を汲み出しては急須に入れた。
ある真昼、和尚は庫裏で書見をしていた。そして、ふと傍らの茶釜を見ると、茶釜の胴の一方から、ふっくらとして毛の厚い狸の尻っ尾が出た。ついで、その反対側から眼の下を黄色に隈取った狸の顔が出た。
和尚は微笑んだ。
それから、前肢が出で後肢が出た。四肢が揃うと、狸は大火鉢の上からひょいと畳の上へ飛び降りた。後肢で立って、前肢で茶釜の腹を叩きながら踊りはじめたのである。
正通和尚は、また微笑んだ。
けれど、老僧は守鶴が昼寝をしたために、老狸の正体を現わしたこと、茶釜に頭と尾、前肢と後肢が生えて踊りだしたことは、決して誰にも語らなかったが、老僧は茶釜が踊り出してからは、これを傍らに置いて愛用する心を続けることはできなかった。
館林の町から古道具屋を呼んできて、只と同じような値で茶釜を払い下げてやった。古道具屋が見ると、甚だ金性がよろしい。