轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
されば、我々は故郷の山川草木にも、強く育てられてきた。
山国に生まれ育った人も、平野に生まれ育った人も、都会に生まれ育った人も、そこは各々の故郷である。私は、江戸時代から先祖代々七、八代も続き、田舎に故郷を持たぬ幾人かの友を持っている。その一人に、将棋の名人木村義雄君があるが、日ごろ彼がいうに、自分は草原山川に囲まれた故郷を持たぬ。
だから、田舎の生活の情味は知らない。そこで、どこが故郷かといえば、やはり東京が故郷である。自分は、本所の割下水で生まれた。つまり、割下水が故郷だ。引き潮時に、掘割の真っ黒い水の底から、ぶつぶつと沸き立つ、あの溝の臭みが故郷の匂いである。
ときどき散歩に行く、丸の内のお堀端の柳が水に映る姿も、故郷の彩である。そんなわけでほんとうに自分は東京の朝な、夕なに愛着を感ずる。いや、愛着どころではない。自分は、東京と切っても切れぬのだ。だから、親戚や友人があちこちへ疎開転住をするけれど、自分は東京から草鞋をはく気持ちになれない。
いつぞや、木村君はこう私に述懐したことがあった。
木村君としてみれば、千代田城の遠霞、水郷である本所あたりの下町情調は、臍の緒切ってからの環境であろう。