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ちいさこべ
ちいさこべ
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页
「いやか」茂次は怒ったように云った、「子供たちにもそのほうがいいし、おれはおまえといっしょになりたいんだ、ずっとまえから、いつ云いだそうかと迷っていたんだが、おまえはいやか」
おりつの顔が歪んだ。彼女は涙の溜まった眼で彼をみつめながら、「棟梁には利息がついてるじゃないの」と云った。
「利息だって」と茂次は訊き返した、「利息とはなんのことだ」
「ごめんなさい、口が辷っちゃったのよ」とおりつは狼狽して云った、「そういうふうに聞いたし、みんなも知ってることだし、棟梁だってそのつもりで」
「いや」と茂次は首を振って遮った、「はっきり云ってくれ、利息とはどういうこった」
おりつが答えた、「おゆうさんよ」
「おゆう――」と茂次はけげんそうな眼でおりつを見た。
おりつは云った。この近所ではまえから、茂次とおゆうが夫婦になるものときめていたようだ。自分もそう思っていたが、十二月に出入りの米屋が話すのを聞いた。「魚万」の再普請に当って、茂次が金を借りたとき、福田屋の久兵衛がこの金には利息が付くと云った。それは金利のことではなく、おゆうを嫁にやるということ、つまり「おゆうが付く」