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やぶからし
やぶからし
山本 周五郎
「週刊朝日増刊」朝日新聞社、1959(昭和34)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,476 字 · 44 页
昔から自己中心の人であった。これは決して、ただの威しではない、わたくしはそう思った。
「念のためにうかがいますけれど」とわたくしは声のふるえるのをこらえながら訊いた、「二十両さしあげれば、きっとこの土地を出ていって下さいますか」
「おれが口でどう云ったって、たぶん信用はしねえだろうが」とあの方はいやな笑いをうかべた、「この難場をれることができるなら、これ以上おやじやおふくろを泣かせたかあねえさ、本当のところせっぱ詰ってるんだから」
本当に生死にかかわるんだ、とあの方は繰り返した。あさっての夕方まで、場所は開田の妙見堂と聞いて、わたくしはあの方と別れた。
――良人に相談するほかはない。
二十両などというお金は、わたくし一人で作ることはできないし、おとうさまやおかあさまには話すにしのびない。良人ならわかってもらえるだろう、そのほかに手段はない、とわたくしは決心した。
その夜、二人になってから話すつもりでいたが、こずえに乳をやっているとき、ふっと気がついた。だめだ、これが終りではない、初めに五両、こんどは二十両。おそらくあの方はまたねだるであろう。二十両の次に幾らねだるかはわからないが、そんなふうに金が取れる限り、あの方は決してここを去りはしない。