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ゆうれいかしや
ゆうれい貸屋
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页
五 世に例なき商売のこと
「まだ性がつかねえか、どうするんだ、待っている人を可哀そうたあ思わねえのか」
これまではただ恐れ入って、へい済みませんくらいの挨拶はしていたが、お染ゆう女なる者が来てからは気が強くなり、ある日ついに家主へ返答をした。
「おらあこれが勝手なんだ、これが性分なんだからうっちゃっといてくれ、待ってるなんてどこの誰だか知らねえが、自分からおん出ていった者を、可哀そうもへちまもありあしねえ、ふざけたことを云わねえで貰えてえ」
「な、な、なんだと」
平作老は怒った。
「なにがふざけたってんだ、なにがへちまだ、仮にも家主に向ってなんてえ口をきくんだ、てめえがいくら底抜けでも、それじゃあ済まねえぞ、お兼さんが出ていったなあ自分が可愛いからじゃあねえ、てめえの身を思えばこそ、てめえを人なみの者にしてえからこそ、泣きの涙で実家へ帰ったんだ、帰るときお兼さんが、泣きながら云ったことを忘れやしめえ、あんたがまじめな気持になったら、すぐに帰って来る、どうか早く帰れるようにしておくんなさい、こう云って泣いたのを覚えているだろう」
五 世に例なき商売のこと
「そればかりじゃあねえ、お兼さんは実家へ帰ってからも、一日だってやくざなてめえのことを案じねえ日はねえんだぞ」