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ゆうれいかしや

ゆうれい貸屋

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页

青空文庫

八 元におさまる般若心経

「大丈夫だったら、あの人は朝までは帰って来やしないわよ、ねえン、そんなに薄情にしないでぎゅっと抱いてようン、あの人どんなだか知らないけど、あたしのは万人に一人の別誂らえよ、さあおとなしくして、これをこう、ねえン」

「ひひひ、よしてくれ、ふふふ、擽ぐってえ、へへへへ、待ってくれ」

身もだえをして、絡み合っているところへ、その二人の眼前へ、なんと、当のお染ゆう女がおどろおどろと現われた。

「あっお染、お、おめえ……」

弥六は、仰天して叫んだ。浮気娘の幽霊は、よっぽと驚いたとみえ、ひと光り青く光ったと思うと、

「お姐さん、味をみさせて貰いましたよ」と、当てつけのようなことを云って、消えてしまった。

八 元におさまる般若心経

「おまえさん、とうとうやったね」お染さんは、静ウかな、そして骨まで凍るような声で、弥六の顔をこう覗きこみながら云った。

「あたしゃ見たよ、この眼でね、ちゃんと見たよ」

「ち、ち、違う、違うんだ、と、とんでもねえ、あれあでたらめだ、嘘っぱちだ」

「あたしのことを、おばあさんだってね、おまえを尻に敷いているってね、とり殺されたらあの娘と夫婦になるってね、おーまーえさーん」