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ゆうれいかしや
ゆうれい貸屋
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,320 字 · 42 页
二 出る幽霊の身に都合あり
こうかきくどいて、ひとしきりまた泣いた。
二 出る幽霊の身に都合あり
女房においてきぼりをくって二年、家主の家からときどき米とか味噌を届けて来るのと、ある物を端から売りとばすのとで、弥六はいっそ気楽そうにくらして来た。
「お兼さんは実家で待ってるんだぞ、可哀そうたあ思わねえのか」平作老はおりに触れてそう小言を云った、「いい腕をもっていて、てめえのようなやつもねえもんだ、まだ眼がさめねえのか」
弥六は、けげんそうな眼をするのであった。
「ああ、誰かと思ったら、大家さんか」
それから手足を踏み伸ばして、大欠伸をし、
「あっあーっ、ふう、なにか用かい」
しぜん平作老も、黙って帰るわけだった。
夏六月。というと今の暦にして七月のことであるが、宵のくちから小雨になって、それが夜半になってもやまない。気温も下って、ちょっと肌寒いくらいであった。蚊帳も吊らず寝床も敷かぬまま、ごろ寝をしていた弥六が、ふと眼をさました。……蚊遣りの火がなくなっていた。だがその火を作るより、蚊にくわれたほうが彼には安楽であった。
「まだ降ってやがる、根気のいい雨だ、飽きねえものかしら」彼は首筋や脛などをぼりぼり掻く、