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アパートのさつじん
アパートの殺人
平林 初之輔
「新青年 第一一巻第九号」1930(昭和5)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,579 字 · 39 页
へ入れておいて、次から次へとつづけさまにふかすのです。
室の中はもちろん、莨の煙がもうもうとたちこめていて、むせるようでした。
枕元には一尺に一尺五寸位なサイド・テーブルがおいてあって、(これはナイト・テーブルというのでしょうか、とにかく小型なテーブルなのです)その上には、桃色のシェードをかけた電気スタンドと、錫製の莨セットとがおいてありました。莨箱の中には、いま申し上げたように、二三十本の吸い口をつけたバットが、裸にして入れてありました。灰皿には、バットの吸い殻が、まるで焼跡の棒杭みたいに乱雑にうず高く積み重なって、まだその吸い殻からは盛んに煙がたちのぼっていました。そしてその吸い殻の中には敷島の吸い殻が五六本まじっていました。平素バットばかりしか吸わない人だったので、敷島の吸い殻があるのは不思議だと私は一目見たときに思いました。
莨セットのそばには、ナルコポン・スコポラミンの小瓶と注射器とがおいてありました。みさをは、ずっと以前からナルコポンの注射をはじめて、いまではどうしてもやめられなくなっていたのです。何でもはじめは友達のしているのを見て好奇心にかられてやったのが、今ではすっかり中毒してやめられなくなったのだそうです。