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アパートのさつじん
アパートの殺人
平林 初之輔
「新青年 第一一巻第九号」1930(昭和5)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,579 字 · 39 页
三 村井保の証言
と考えつづけていたものです。
試合がすむと、私は用事があるからというのでみんなと別れて、タクシーでかけつけて真っすぐにみさをの室へ飛んでゆきました。階段の上がり口で、植田欣子さんにあいましたが、何を言ったか言われたかも夢中で、あれの室へかけていったのです。
ノックをしてみたが返事がないので、扉を押すとあきましたから、中へはいってみると、薄暗がりだのにまだ電気もついていないのです。スイッチをひねってみると、彼女は、頭から布団をかぶって寝ているらしいのです。不意におどかしてやろうと思って、私は靴をぬいで、そっと枕元へ行って、揺り起こそうと思って手をやろうとすると、毛布の端からまっ蒼な彼女の額が見えるのです。彼女はもう冷たくなって死んでいたのです。
それからあとのことは皆様がご承知のとおりです。十一時前に私が出るときはたしかにみさをは生きていました。そして六時前に帰ったときは、もう死んでしまったあとでした。それにちがいありません。
三 村井保の証言
村井保は、映画雑誌、シネマ時報の編集主任で、年齢は三十四歳、雑誌記事のことで、東京キネマのスタジオへ出入りしているうちに山上みさをと知り合いになり、半年ほど前から彼女と情事関係をむすんでいたものである。