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アパートのさつじん
アパートの殺人
平林 初之輔
「新青年 第一一巻第九号」1930(昭和5)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,579 字 · 39 页
七 村井保の第二回目の証言
私は、今日の午後三時頃に、松木さんが、山上さんの室から出てゆかれるとこを見ました。松木さんは、近頃よく山上さんのところへいらっしゃったから顔はよく知っています。まちがいっこはありません。時刻は正確とは言えませんが、たしか三時頃です。三時少し過ぎてたかもしれませんが三時前ってことはないと思います。松木さんの方では私には気がつかれなかったようでした。私は、左側の廊下から、食堂の方へ通ずるパセージ〔通路、廊下〕から横に見ていたのですし、それに松木さんは、その時、たいへん急いでいらっしゃるようでしたから。
七 村井保の第二回目の証言
恐れ入りました。(と村井保は、係官の第二回目の峻厳な訊問に対して、頭をうなだれ、声をふるわして答えた)すっかり申し上げます。午後三時少し過ぎに、みさをの室から出ていったのは、たしかにわたしに相違ありません。ちょうどあれから社へ帰ってみると、みさをについての面白い原稿がきたので、次号に、その記事を出すついでに、彼女の写真を口絵に一頁大で出すことにきめましたので、そのことを知らせたり、その原稿を見せたりするために、やってきたのでした。