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アパートのさつじん

アパートの殺人

平林 初之輔

「新青年 第一一巻第九号」1930(昭和5)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,579 字 · 39 页

青空文庫

五 植田欣子の証言

で今朝も……いえなに、まあそういった具合で、お互いに別れをおしんで別れて出ていったんです。今夜あんな姿になっているのを見ようとは夢にも思わなかったのです。時刻ですか、私が出たのが十二時少し前でしたね、たしか。もちろん生きていましたとも。「左様なら、また今晩もぜひ来てね」って、私のこの手にキッスしてましたからまあ。

五 植田欣子の証言

山上みさをは、以上の三人の証言によって、三月――日午前十一時までは生きていたことが証明されたわけである。村井が帰ったのが十一時で、そのあとで、松木久作が山上にあっているのだから。だが松木久作の証言のように、十二時少し前まで山上が生きていたということは松木だけの証言では証明されたとは言えない。というのはその後山上の生きていたのを見た人は誰もないからである。そして少なくも午後六時までには、山上は死んでいたことは神村進の証言によって証明されたわけである。

植田欣子は山上みさをとほぼ同年輩でやはり、東京キネマの女優である。彼女はみさをととても親しい、友人以上の間柄であったと言われていた。みさをの室の左側の隣の室を借りて住んでいたのである。