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パノラマとうきだん

パノラマ島綺譚

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页

青空文庫

彼はその吉報(?)に接して、やがてある事に思い当ると、恐らく何人も嘗て経験したことのない不思議な歓喜を味い、そしてその次の刹那には、彼自身の考えの余りの恐しさに、歯の根も合わぬ程の戦慄を覚えたのであります。

その報知を齎した者は、大学時代彼の同級生であった、一人の新聞記者でありましたが、ある日、その男が、久し振りで廣介の下宿を訪れ、何かの話の序に、無論彼としては何の気もつかず、ふとその事柄を言い出したのでした。

「時に、君はまだ知るまいが、つい二三日前に君の兄貴が死んだのだよ」

「なんだって?」

その時人見廣介は、相手の異様な言葉に、ついこんな風に反問しないではいられませんでした。

「ホラ、君はもう忘れたのかい。例の有名な君の片割だよ、双生児の片割だよ。菰田源三郎さ」

「アア、菰田か。あの大金持の菰田がかい。そいつは驚いたな。全体何の病気で死んだのだい」

「通信員から原稿を送って来たのだよ。それによると、先生持病の癲癇でやられたらしい。発作が起ったまま回復しなかったのだね。まだ四十の声も聞かないで、可哀相なことをしたよ」

そのあとにつけ加えて、新聞記者はこんなことを云いました。