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パノラマとうきだん

パノラマ島綺譚

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页

青空文庫

友達といっても、親しく話したこともないのだけれど。だが、『RAの話』というのは読まなかった。君はどうしてその原稿を手に入れたのだね」

「そうですか、では御主人のお友達だったのですか。不思議なこともあるものですね。『RAの話』は一九――年に書かれたのですが、その頃は御主人はもうT市の方へ御帰りなすっていたのでしょうね」

「帰っていた。その二年ばかり前に分れた切り、人見とはすっかり御無沙汰になっている。だから、彼が小説を書き出したことも、雑誌の広告で知った位なのだよ」

「では、学生時代にも余りお親しい方ではなかったのですか」

「まあそうだね。教室で顔を合せれば挨拶を交す程度の間柄だった」

「私はこちらへ来るまで、東京のK雑誌の編輯局にいたのです。その関係から人見さんとも知合いになり、未発表の原稿も読んでいる訳ですが、この『RAの話』というのは私などは実に傑作だと思っているのですけれど、編輯長が余りに濃艶な描写を気遣って、つい握りつぶしてしまったのです。それというのが、人見さんはまだ駈け出しの、名もない作者だったものですから」

「それはおしいことだったね。して、人見廣介はこの頃ではなにをしているかしら」