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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
四
の中にムラムラと湧き起って来たのです。彼は真青になって歯を喰いしばって、はてはガタガタ震えながら、いつまでもじっと一つ所に坐ったまま、その段々ハッキリと正体を現わして来る考を見つめて居りました。ある時は、余りの怖さに、次々と湧き上る妙計を、押え止めようと努力したのですが、どうして止まるどころか、押えれば押える程、却って百色眼鏡の鮮かさを以て、その悪計の一つ一つの場面までが、幻想されて来るのでした。
四
彼がその様な、謂わば未曾有の悪企みを考えつくに至った一つの重大な動機は、M県の菰田の地方では、一般に火葬というものがなく、殊に菰田家の様な上流階級では、猶更らそれを忌んで、必ず土葬を営むに極っているという点に在りました。その事は在学時代菰田自身の口からも聞いて、よく知っていたのです。それともう一つは、菰田の死因が癲癇の発作からであったことでした。これが又、彼のある記憶を呼び起さないではいなかったのです。
人見廣介は、幸か不幸か、以前ハルトマン、ブーシュ、ケンプナーなどいう人々の、死に関する書物を耽読したことがあって、殊に仮死の埋葬については、可成の知識を持っていたものですから、癲癇による死というものが、如何に不確で、生埋めの危険を伴うものだかを、よく心得ていたのです。