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パノラマとうきだん

パノラマ島綺譚

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页

青空文庫

十四

「いくら酒に酔っていたからと云って、お前は何という取返しのつかぬことをして了ったのだ。この処置をどうつけようというのだ」

廣介は悔んでも悔んでも悔み足りない思いでした。

そうして、彼等夫妻は、千代子の部屋に相対したまま、双方とも一ことも口を利かず、長い間睨み合っていましたが、遂に千代子は恐れに耐えぬものの如く、

「済みませんが、わたくし、ひどく気分が悪うございます。どうか、このまま一人ぼっちにして置いて下さいまし」

やっとこれ丈けのことを云うと、いきなりその場へ突俯して了うのでした。

十四

廣介が、千代子殺害の決心をしたのは、そのことがあってから、丁度四日目でありました。

千代子は一時はあれ程までも彼に敵意を抱きましたが、よくよく考え直せば、仮令どの様な確証を見たからと云って、それなれば、あの方が源三郎でないとしたら、一体全体この世の中に、あんなにもよく似た人間があり得るのでしょうか。それは、広い日本を探し廻れば、全く同じ顔形の人がいないとは限りませんけれど、そんな瓜二つの人が仮りにいたところで、その人が丁度源三郎の墓場から甦ってくるなんて、まるで手品か魔法の様な、器用な真似が出来るとも思われません。