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ヨブきこうえん

ヨブ記講演

内村 鑑三

丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页

青空文庫

第二講 ヨブの平生と彼に臨みし患難

彼に取ってはこれが患難苦痛の唯一の解釈法である。友人らの提供する種々の説明も彼に何ら満足なる解答を与えない。あるいは人生の長き実験より、あるいは深き学識より、あるいは温き同情より彼を慰むれどもいずれも問題の中心に触れない。かくて彼の煩悶いよいよ加わる時、遂に父はキリストにおいてその姿を現わしその光彼を環照し、その光の中にすべての懐疑や懊悩がおのずと姿を収めるのである。そしてすべてを失いてもこれを糞土の如く思い得るに至るのである。

◯因に記す、ヨブ記は文学書にあらずしてしかも世界最大の文学書である。世界の大文学中ヨブ記を手本として作られしものは少なくない。ゲーテのファウスト、ダンテの神曲、シェークスピヤのハムレット、カアライルのサアター・レサアタス(Sartor Resartus)、ブラウニングのイースタアデー(Easter Day)とラビ・ベン・エズラ(Rabbi Ben Ezra)等はそれである。また現代英の文豪たるH・G・ウェルズの『不死の火』(Undying Fire)の如きもヨブ記を手本とせる作物である。以てヨブ記の大を知るべきである。

第二講 ヨブの平生と彼に臨みし患難