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ヨブきこうえん
ヨブ記講演
内村 鑑三
丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页
かくの如くにしてここにヨブの願いし処は遂にある時実現せらるるのである。実に感謝すべき事ではないか。
◯しかるに十八節以後においては、ヨブに起りし光明の一閃は消えて再び哀哭に入るのである。「それ山も倒れて終に崩れ巌も移りてそこを離る、水は石を穿ち浪は地の塵を押流す、汝は人の望を絶ち給う」と、ヨブは依然として豊富なる自然観察の知識を借りて、人の運命を歎くのである。自然界の変動が目に見えざる如くにしてしかも徐々として行わるるが如く、人の生命もまた徐々として絶たるるというのである。「汝は彼を永く攻めなやまして去り往かしめ、彼の面容を変らせて逐いやり給う、その子貴くなるも彼はこれを知らず、卑賤くなるもまたこれを暁らざるなり、ただ己みずからその心に痛苦を覚え己みずからその心に哀くのみ」という。これ死者は陰府にありてこの世の成行を感知し得ず、半醒半眠の中にただ自己の痛苦否運を感ずるのみとの、時代信念を背景として読むべき箇処である。げに痛切悲愁なる魂の呻きである。
◯今十四章を全体として視るに、光明既に臨めりということは出来ない。全体を蔽うものは依然たる暗雲である。