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ヨブきこうえん
ヨブ記講演
内村 鑑三
丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页
第一章、二章の研究
第一章、二章の研究
◯ヨブ記は今日の語を以てせば劇詩(Dramatic Poetry)と名づくべく、また叙事詩(Epic)と称すべきものである。劇詩と見るも舞台に上すべき性質のものではない。ギリシャ人の如くに風景的観念に豊かならぬユダヤ人の作なれば、これを舞台に演ずる時は簡単にして無味なるを免かれぬ。ヨブの平生、天国における神とサタンとの問答、ヨブに臨みし災禍、三友人の来訪、ヨブ対三友人の長い論争、エリフの仲裁、最後にエホバ御自身の垂訓とヨブの慚改感謝――これにて大団円となるのである。これでは劇として余りに無意味である。故にこれは舞台に上すために書いたものでないことは明かである。しかし劇作に甚だ乏しきユダヤ文学のことなれば、ヨブ記、雅歌等をその中に加うるも可なりと思う。
◯ヨブは実在の人物か想像の人物かは一の問題である。そして余はヨブを実在の人物と信ずる者である。その本名がヨブなりしかどうかは不明なるも、少くともこの人の味いし経験は事実的に起りしものと余は認めるのである。たしかにヨブ記はある確実なる事実を根拠とせるものである。もとよりかかる作品の常としてその光景、その対話等に著者独特の修飾あるは当然ながら、この作がある事実の詩的表現であることは疑うべくもない。