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ヨブきこうえん

ヨブ記講演

内村 鑑三

丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页

青空文庫

◯以上ヨブ記三十八章以下の「エホバ対ヨブの問答」についてここに二、三の注意を述べたいと思う。(第一)ここに各種の現象と動物について記されて、植物に関して一言も云わざるは何故であるかと批評家は問題を起すであろう。思うにこれヨブ記が砂漠を舞台とせるためであろう。ヨブは植物に乏しき砂漠の住人として、神の力を植物において充分に窺うことは出来なかったのである。ヨブ記はたしかにこれ「砂漠文学」である。

◯(第二)ある人は抗議を提出していうであろう。ヨブは天然物を見て神に悟り得しならんも、今の時代において煩悶苦悩せる人に向って「鴉を見よ、馬を見よ」というも何らの効果あるべからずと。そして今や悩める人に向っては教会に行けとか宗教書類を読めとかいうのが普通である。さりながらヨブの三友人は当時の神学を以て彼に迫って失敗に終わった。もしこの上ギリシャ・ローマの哲学を以てするも、到底彼に満足を与え得なかった事は明かである。人の言を以てしては、到底ヨブを安心せしむるを得なかったのである。この時彼は神の所造物において神を拝するを得て、自己の罪を懺悔するに至り、ために事は喜ばしき解決を告ぐるに至ったのである。