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ヨブきこうえん
ヨブ記講演
内村 鑑三
丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页
「汝らが知る所は我もこれを知る、我は汝らに劣らず、しかりといえども我は全能者に物言わん、我は神と論ぜんことを望む。汝らはただ虚言を造り設くる者、汝らは皆無用の医師なり。願くは汝ら全く黙せよ、しかするは汝らの智慧なるべし」という如きは、明かにヨブのこの態度を示すものである。なお十三章の中にて大切なる句は十五節である。邦訳聖書には「彼れ我を殺すとも我は彼に依頼まん、ただ我はわが道を彼の前に明かにせんとす」とある。この語の前半はまことに美わしき心情を示した語として有名であるが、実はそれは誤訳である。「彼れ我を殺すとも我は彼を待ち望まず」と改訳すべきである。かくて十五節の意味は「我は飽くまでわが無罪を神に訴えん、そのため彼に殺さるるに至るも敢て厭わず」というに在る。彼は勇気を揮い起してこの強き語を発してみた。しかし神よりは何らの反響がなく、友は皆かれを誤解している。そして己の中にはこの勇気を持続せしむるだけの力がない。一度起せし勇気は忽ち消滅せざるを得ない。あたかも重病人が卒然として仇敵のその前に立つに会し、憤然として一旦起ち上りしも、自己自身に力なきためただちに倒るるが如くである。