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ヨブきこうえん
ヨブ記講演
内村 鑑三
丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页
第十四章以後のヨブの語には、たしかにこの心持が見えているのである。
◯十四章はヨブ記中最も重要なる章の一である。神と争わんとして己の無力を悟りしヨブの悲歎は、壮大なる悲哀美となってこの章に表われている。彼は自然界の諸々の物象に比して、人間のはかなさを描き出ずるのである。ここにおいてもまたヨブ記作者の優秀精到なる天然観察者なることを知るのである。
◯「女の産む人はその日少なくして艱難多し」と一節はいう。人は誰人といえども女より生れしものであれば、女の産む人と殊更に言う必要はないともいえる。しかしこの語には深き意味がある。女は体も心も弱きものである。故に「女の産む人」と記して、万人の弱き事が暗示せられたのである。実に女の産む人はその日少なくして艱難多しである。クロムウェルの如き、ナポレオンの如き人類中の最強者といえども、実は弱き女の産みし弱き人の子たるに過ぎない。彼らの生涯は明かにこの事を示している。げに人は皆弱き者である。この事を知らずしては、我らは真の同情を人に向って起すことは出来ない。
◯二節には「その来ること花の如くにして散り、その馳すること影の如くにして止まらず」