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おもいで
ロッパの悲食記
古川 緑波
古川緑波『ロッパの悲食記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:想い出、ああ東京は食い倒れ、浅草を食べる、色町洋食、うどんのお化け、甘話休題、牛鍋からすき焼へ、下司味礼賛、神戸、氷屋ぞめき、このたび大阪、清涼飲料、食べたり君よ、駄パンその他、八の字づくし、富士屋ホテル。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,651 字 · 114 页
小さな、ガラスのコップに、山盛りになっている。そのアイスクリームの山のてっぺんから、少し宛舐めて行く時の悦び。アイスクリームの色が、今よりも、ずっと黄色かったことと、函館屋の照明が、青白いガスだったことを、覚えている。
明治四十何年ぐらいの、銀座だった。
その頃、活動写真館の中売りが「ええアイス、アイスクリン」と呼びながら売っていた、薄味のアイスクリームも、少年の日の思い出だ。
薄味というのは、卵も牛乳も碌に入っていない、お粗末な、だから一個五銭位だったろう、そういうアイスクリームなのだ。いいえ、アイスクリームじゃない、売り声の通り、アイスクリンなのである。
でも、それを買って、活動写真(と言わして呉れ。映画と言っちゃあ感じが違うんだ)を見ながら食べるのは、幸福だった。
アイスクリームを、うまいと思ったのは、大人になってから、北海道へ行った時、札幌の豊平館で、量も、ふんだんに食った時だった。
中学時代。はじめて自分の、小遣いというもので、食べたのは、三好野だの、そういう類の、しるこ屋――というより大福屋と言いたい店。豆大福や、スアマなんていう菓子があったっけ。