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おもいで
ロッパの悲食記
古川 緑波
古川緑波『ロッパの悲食記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:想い出、ああ東京は食い倒れ、浅草を食べる、色町洋食、うどんのお化け、甘話休題、牛鍋からすき焼へ、下司味礼賛、神戸、氷屋ぞめき、このたび大阪、清涼飲料、食べたり君よ、駄パンその他、八の字づくし、富士屋ホテル。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,651 字 · 114 页
それが、四個皿に盛ってあって、十銭だったと思う。
パンじゅうの、餡の紫色が、今でも眼に浮ぶ。
カフエー・パウリスタが出来たのも、僕の中学生時代のことだろう。
カフエーと言っても、女給がいて、酒を飲ませる店ではなく、学生本位の、コーヒーを主として飲ませる店だ。
パウリスタは、京橋、銀座、神田等に、チェーンストアを持ち、各々、一杯五銭のコーヒーを売りものにしていた。そのコーヒーは、ブラジルの、香り高きもので、分厚なコップに入っていた。
砂糖なんか、あり余っていた時代だ。テーブルの上に置いてある砂糖壺から、いくらでも入れることが出来た。学生の或る者は、下宿への土産として、此の砂糖をそっと紙などに包んで持って帰る者もあった。
パウリスタで思い出すのは、ペパーミントのゼリー。それから、自動ピアノというものが、各店に設備してあり、これも五銭入れると、「ウイリアム・テル」だの「敷島行進曲」だのを奏するのであった。
兎も角も、あの時代の、そういう喫茶店、菓子を食わせる店の、明るく、たのしかったことよ。
そして、例によって、僕は、「それに引きかえて現今の」と言って、嘆こうというのであるが、昔を知る諸君なら、誰だって、同感して貰えると思うのだ。