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「もくせい」ごうのなぞ
中谷宇吉郎集 第六巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页
この会館のいちばんの取柄は、風呂がいつでも使えることであった。現在はもちろん当時でも、アメリカでは、浴槽に熱い湯が常時出るのが普通であった。しかしヨーロッパのほうでは、一般の家庭では、いつでも風呂が使えるというわけにはいかなかった。私も弟も温泉地生れで、湯は大いに好きだったので、風呂の点では、この会館が大いに気に入っていた。
夕方そとから帰ってくると、まず一ト風呂浴びる。夜は十二時頃までそれぞれ仕事をしていて、くたびれると誘い合わせて、長い廊下をわたって浴室へ行く。浴槽はそれぞれコンパートの中にあって、それが便所のように並んでいる。湯からあがると、誰かの部屋で涼みながら、とりとめもない話を一時間くらいやって、各々自分の部屋へ帰って寝る。まことに優等生ぞろいであった。
ところで初めのうちは、これで一応満足していたのであるが、少し馴れてくると、日本の風呂のほうが、だんだんなつかしくなってきた。当然のことであって、考えてみれば、西洋の風呂というものは、あれは衛生設備であって、娯楽的要素はぜんぜんないものである。押入れみたいなところへはいって、お棺みたいなものに湯を入れ、その中でじっと横になっているだけである。