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「もくせい」ごうのなぞ
中谷宇吉郎集 第六巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页
八戒に遭った話
もう十年昔の話になるが、学士院賞を貰った時に、その金で『東瀛珠光』と『西域画聚成』とを買ったことがある。
学士院賞というものは、私たちが中学へはいって間もない頃創められたもので、賞金は千円であった。当時千円という金額が決められたのについて、もちろん嘘ではあろうが、京童はこういうかげ口をきいたものだそうである。即ち、学者は一生研究していても、到底自分の家を持つことは出来ない、せめてとくに優れた研究をした学者には、家くらいは建てさせようというので、千円と賞金額がきまったというのである。
ところがその千円がいつまでも動かないので、私たちの時代になると、賞金では、友人を一晩呼んで御馳走することも出来なくなっていた。現に私から一年か二年前にこの賞金を貰った化学の先生が、親戚及び知友をまねいて、一夕内祝の宴をはったら、大いに足を出したという話であった。それで私は、そういうことは一切やらずに、丁度紀元二千六百年の記念出版として、審美書院から売り出されていた『東瀛珠光』と『西域画聚成』とを買うことにした。両方併せて丁度千円で、まことに工合のよい話であった。
ちょっと思い切ったことをしたようでもあるが、今から思うと、それは甚だ賢明であった。