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「もくせい」ごうのなぞ

中谷宇吉郎集 第六巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页

青空文庫

私のふるさと

私のふるさとは、石川県の片山津という温泉地である。柴山潟という湖のほとりにあって、私の子供のころは、まだ淋しい湖畔の小さい温泉地であった。

この潟にはあしが一面に生えていて、ばんという黒い水鳥が、たくさん棲んでいた。泉鏡花の小説にも出てくるが、このばんという鳥は、何となくこの世ばなれをした感じを与える鳥である。女のたましいを思わすような眼をしている。それも玄人風な女である。

温泉地であるから、毎晩のように三味線の音や女の唄声などが、宿屋の明るい窓を洩れて、暗い湖の面に消えていくというような風情があった。もっともその頃はまだ電灯のなかった頃で、街は暗く、それにひどい田舎の温泉地のことであるから、色っぽいところがあったといっても、きわめて素朴なものであった。

北陸地方のことであるから、冬になると、よく雪やみぞれをまじえた強い風が吹いた。そういう時は、温泉宿にもほとんど客がなく、湖がまるで海のように荒れた。その浪音が、床の中までひびき、枕もとのランプの小さい火がゆらゆらと動いた。戸じまりの悪い田舎の家は、いろいろなところが、がたがたと鳴った。

そういう晩は、私と弟は、祖母の床にもぐり込み、その両わきにぴったりと身をよせてねた。