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「もくせい」ごうのなぞ

中谷宇吉郎集 第六巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页

青空文庫

ケリイさんのこと

十二月の初め頃、ちょっと用事があって、ワシントンへ出かけた。実は用事といっても、大したことはなかったので、久しぶりにケリイさんに会ってみたいという気持もあったからである。

ケリイ博士といえば、日本の自然科学関係者の間には、非常に親しい名前である。終戦後間もなく日本へやってきて、総司令部の経済科学局で、自然科学方面の主任を、ずっとやっていた物理学者である。たしか講和会議のすぐ前までいたはずで、日本に対して、非常に深い理解をもっていた。終戦直後の虚脱状態にあった日本の科学界が、案外早く息を吹き返したのは、この人の親身も及ばぬ介抱が、大いに役に立った。

占領軍としての総司令部は、各種の政策を残していったが、その中には、今日になれば、いろいろ批判されることもあろう。しかし自然科学に関する限りは、その施策は、かなり適正なものであったし、また親切でもあったと思われる。とにかく、日本の科学界は、私たちが初めに予想したよりも、ずっと急速に、その体力を恢復したという感じがする。

日本は、現実問題として、世界の歴史に残るような完全敗北を喫したのである。そういう敗戦国で、敗戦後八年目には、もう世界の理論物理学会の大会が開かれたのである。