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「もくせい」ごうのなぞ

中谷宇吉郎集 第六巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页

青空文庫

しかし今日のように人智の発達した時代でも、人間はいつまでも性懲りもなく、勝者敗者ともに苦しむ戦争をくり返している。今日でも人類の全行為を分類したら、その型式は、六十四に満たないであろう。そういう意味では、現代のわれわれも、春秋秦漢時代、即ち中国草莽期の思想を嗤うことは出来ないのである。

医家は、今日の医師の如く、薬餌をもって病を治することを主たる仕事としたもので、内省的な問題を論ずる場合には、詳しく触れる必要がない。問題は房中家である。房中の術は、古代人にとって甚だ神秘的であった男女交媾のことを論じたものである。初めは節慾の大切なること肆慾の大害あることを説いたくらいに過ぎなかったが、これから寿夭が分れ、禍福が生じ、時に怪訝すべき事情等が発現する場合もあったので、「逆に推測して房中秘密の中に神異霊恠の解釈を求むるに至つた」のである。この思想は、古代の生殖器崇拝の思想と暗に呼応して、遂には房術をもって神僊たり得るような思想にまで発展した。この邪毒は案外に永くその根をひき、遠く我が国までも伝わり、平安朝の頃には、いろいろな病気が房術によって治されるというような迷信まで生じたのである。