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こごえるおんな
凍える女
小川 未明
「三田文學」1912(明治45)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,949 字 · 20 页
この人は、全くの独り者で、骨肉というものはただおあい一人しかなかった。おあいは、極めてはきはきとした勝気の女であった。また、自分の出来ることなら人に対しても、随分物をやることなどに惜みはしなかった。けれどしみじみと物事を考うるというような女ではなかった。思ったことは、後からどうなってもはきはきとしてしまう。而してたとえ悔るようなことがあっても決してそれを口に出して人に向って愚痴をいうようなことのない勝気な女であった。隣の叔母とも、いろいろ言い争ったこともあったが、つまり、おあいの勝気な性質から起ったことが多かった。叔母という人は、極めて、物の分った穏かな人で、死ぬ時まで人の世話になるのを好まずに自分で出来ることは自分でして人に迷惑をかけなかった人である。それで、おあいの子供等には、よく、着物を買ってやったり、また家のために尽したこともあったが、自分が、おあいの家へたえず出入りして、子供等の世話をするとか、おあいの家が困るからといって自分で来て、それの相談相手となるとかいうようなことはしなかった。おあいが、どうも困るから少し金を借して下さいと言って行けば、或時は黙って渡した。