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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

お兼 そうかえ。それはよかったね。お行儀よくしていただいたかえ。

松若 あゝ。わしの清書が松だったのだよ。

お兼 そうかえ。それはえらいね。草紙をお見せ。この前の清書の時は竹だったにね。(松若より草紙を受け取り、広げて見る)なるほど、「朱に交われば赤くなる」だね。だいぶしっかりして来たね。も少し字配りをよくしたらなおいいだろう。丹誠してお稽古したおかげだよ。(松若の頭をなでる)

松若 吉助さんとこの吉也さんは梅だったよ。

お兼 あの子はいたずら好きでなまけるからだよ。(間)あの、ちょいと立ってごらん。(松若立つ。ものさしで丈を測る)三寸五分だね。ではあげを短くしなくては。お前の荷物だよ。よくうつるだろう。お正月にこれを着てお師匠様の所に年始に行くのだよ。

松若 お正月はいつ来るの。

お兼 もう十二日寝ると来るよ。

松若 おとうさんは?

お兼 おとうさんは吉助殿の所へ行かれた。もうおっつけお帰りだろう。

松若 吉助のうちの吉也は私をいじめるよ。きょうもお稽古から帰りに、皆して私の悪口を言って。

お兼 え。悪口をいっていじめるって。ほんとかい。

松若 松若のおとうさんは渡り者のくせに、百姓をいじめたり、殺生をしたりする悪いやつだって。