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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
第三場
仏様のみ名はあなたの死によってますます讃められるのでございましょう。
親鸞 仏さまのみ名をほめたてまつれ……(次第に夢幻的になる)わしの心は次第に静かになってゆく。遠い、なつかしい気がする……仏さまが悲引なさるのだ……外は涼しい風が吹いているのだね。
唯円 (ぞっとする)はい。いいえ、あかあかと入陽がさしています。
親鸞 近づいて来るようだ。兆が……座敷はきれいに掃除してあるね。
唯円 塵一つ落ちてはおりませぬ。
親鸞 わしのからだは清潔だね。
勝信 昨日、御沐浴あそばされました。
親鸞 弟子たちを呼んでおくれ。皆呼んでおくれ。わしが暇乞いするために。最後の祝福をあたえてやるために。
勝信 かしこまりました。(立ち上がる)
唯円 (深き動揺を制する。小声で勝信に)お医者様を。
勝信いそぎ退場。
唯円 (親鸞の手を握る)お師匠様。お気をたしかにお持ちあそばしませ。
親鸞 (うなずく)お灯明を。仏壇にお灯明を。南無阿弥陀仏。
第三場
舞台、第一場に同じ。夜。淡白い空に黒い輪郭を画している寺の屋根。その上方に虹のような輪をかぶった黄色な月がかかっている。通用門の両側には提灯を持った僧二人立ちいる。