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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

あの子の声に飢えている……

唯円 お会いなさいませ。お師匠様。父と子とが互いに会いたがっている。それを会うのがなぜそのようにむつかしい事なのでしょう。実に単純な事ではございませんか。

親鸞 まことに単純な事だ。調和した浄土ならすぐできるやさしい事だ。その単純な事ができぬような不自由な世界がこの世なのだ。(声を強くする)多くの人々の平和がその単純な一事にかかっている。無数の力が集まって私をさえぎっている。私は今その力の圧迫を痛切に感じている。私は争う力がない。(身をもがく)私は会えない。

唯円 いいえ。会ってください。会ってください。あなたはあまり義理を立て過ぎなされます。あなたのお子と思わずに、隣人として、赤の他人と思って……

親鸞 (苦しげに)おゝそれが私にできたなら! 私はそう思うべきであると信ずる。そう思えよとお前に教える。しかしそう思う事ができないのだ。お前はさっき私が他人に優しくわが子にきびしいと言ったね。それは私がわが子ばかり愛して、他人を愛する事ができないからだ。私は善鸞を愛している。私の心はややもすれば善鸞を抱きかかえて他の人々を責めようとする。