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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

私ほんとうにねえさんきりよ。何もかも打ち明けるのは。また私が気が高いって言うのはほんとうかもしれないわ。いつかねえさんが私におっしゃったでしょう。どのような身になっても心に何かのほこりというものを持っていない女はきらいだって。

浅香 (涙ぐむ)よく覚えていてくれた。あゝ、けれど人様から卑しきもののたとえに引かれる遊女の身で、そのような事を考えているのはばかげているかもしれない! かえでさん。私は何も言う事はなくてよ。ただあなたがいとしいだけよ。何もかも耐え忍ぶよりほかありません。あきらめるよりほか――あゝ、あきらめるという心持ちはなんてさびしいこころでしょう。

かえで わかっててよ。ねえさん。(涙ぐむ)あなたがいてくださらなかったら、私はこれまでどうなっていたかわかりませんわ。私はお腹の内では手を合わせて拝んでいますわ。

両人沈黙。鼓の音だけきこえる。

かえで (欄干のそばに行き外をながめる)ねえさん来て御覧なさい。東山から月が出るところよ。

浅香 (かえでのそばに行き欄干にすがる)山の縁がぽーっと明るくなっていますね。

かえで 向こう岸の灯の美しいこと。

浅香 橋の上を人影がちらほらしていますね。