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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
私は勇気をあつめなくてはならない。そして美しい、取りみださぬ臨終をするために心をととのえなくてはならない。
勝信 (泣く)
親鸞 (しずかに)唯円を呼んで来てくれ。
勝信 はい。(退場する)
親鸞 (しばらく黙然として目を閉じている。やがて目をひらき、何ものかの影に脅かさるるごとくあたりを見まわす)どこからともなく、わしの魂を掩うてくる、この寒い陰影は何ものであろう。薄くなりゆく日輪の光、さびしく誘うような風のこえ、そしてゆうべのあのゆめ見……近づいて来たようだ。(目をつぶる)だれも避けることのできない運命なのだ。何十年のながい間私はその日を待っていなかったろうか。長い、絶え間の無い罪となやみの生涯の終わりに来るあの永遠の静かな安息を。むなしく待つことの多いこの世の希望のあざむきのなかで、これのみはたしかな、必ず来るものとして、わたしは待っていた。それを考えるになれて親しさができていた。わしはしばしば思わなかったろうか。「わしのこの苦しみと忍耐とは限りなきものではない。必ず終わる日が来る」と。そしてそう思うことは、私の唯一のなぐさめではなかったろうか? ついにその日が来た。