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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

松若 いんや。確かにだれか戸をたたいてるよ。

良寛 (戸を強くたたく)もしもし。お願い申します。お願い申します。

お兼 (耳を澄ます)ほんとに戸をたたいてるね。だれか人声がするようだ。(庭におり戸を開く)どなた様で?(三人の僧を見る)何か御用でございますか。

松若母の後ろより好奇心でながめて立っている。

良寛 旅の僧でございますが、この吹雪で難儀いたしております、誠に恐れ入りますが、一夜の宿をお願いいたす事はできますまいか。

お兼 それはお困りでございましょう、もう十丁ほどおいでなされば宿屋がございます。

慈円 あの私たちは托鉢いたして歩きますものでお金を持っておりませんので。

良寛 どのような所でもただ眠ることさえできればよろしいのでございますが。

お兼 さようでございますか。(三人の僧をつくづく見る)ではちょっと夫にきいてみますから。そこはお寒うございます。内にはいってお温まりあそばせ。

左衛門 お兼。なんだい。

お兼 旅の坊さんなんですがね。三人ですの。この雪で困るから一夜だけ泊めてくれないかとおっしゃるのです。お金がないから宿には着けないのですって。

三人の僧内にはいり庭に立つ。